また、明日。

マイペースにやってます。

映画 『この世界の片隅に』

ようやく見れました。

開始直後ののんさんの声を聞いただけで涙がポロポロと。日常の小さな幸せ、日常生活こそが奇跡だというそのことをギュッと煮詰めたような透明感のある声で、柔らかい言葉の吐き出しに心を鷲掴みにされました。

 


映画『この世界の片隅に』予告編

 

あちこちのインタビューで見かけた街の再現性の高さ。私は当時の広島の姿を知りませんが、あそこに住んでいた人たちが嬉しそうに話をしていた番組を見ていたので、原爆投下前にひとりひとりの生活があったということが、生々しく伝わります。小さな小さなディテールに宿るリアリティ。その丁寧な仕事ぶりには頭が下がる思いです。

 

さて、この映画には小さな出来事がたくさん詰まっています。食べられる野草のこと、小さな畑のこと、遠くに見える海のきらめきのこと、かまどの火加減のこと、お裁縫のこと、望まれて嫁ぐこと、誰かに想われること、人が傷つくこと、家が焼けること、そして人が死ぬこと。最大の事件は空襲(と人が死ぬこと)と原爆ですが、それすらも日常に溶け込む出来事のひとつであり、日常生活が奇跡であることの演出にしか見えません。ひとつの流れの中で起きた、一つの出来事にすぎないのです。

 

後半、すずさんは「ぼんやりしたまま死にたかった」と言いました。喜びを奪われ、なにもしらずにぼんやりしたままの自分を喪い、日常をつつがなく送るようにみえた彼女は本当は途方にくれていたはずです。でも、日常は待ってくれない。個人の人生における大きな事件であり、日常の軌跡を根底から揺るがすものだったでしょう。しかし誰かの人生における大事件でも、世の中を揺さぶることはほとんどありません。大きな世界の中の小さな私たちに起きる出来事はそんな瑣末なものなのです。

 

そしてその出来事をくぐり抜けたすずさんは、それまで以上に日常を力強くつむいでいきます。そこには強い決意や奇跡はないけれど、淡々と、でも確実に意思を持つすずさんがいて、彼女の人生を少しずつ塗り替えていきます。これこそが「奇跡」なのかもしれない。そして旦那さんがいつ、どこで、すずさんを見初めたのかという夢のような話が、ぼんやり夢見心地な彼女のなかでひとつの事実として認識され、世界を見つめる目が大きく変わります。

 

私達はまだまだ生きていける。なにがあっても、絶望がそこにあったとしても、生きている限りは前を向いて、目の前の日常を積み上げていく。それが美しく、尊く、力強く、些細なものでも大事であることを、この映画は伝えてくれました。

 

最初から最後まで泣きっぱなしで、感情の波はすごかったですが、映画そのものは静かで、淡々としています。アニメでしか表現できない、おっとりした・ゆったりした時間とお話でした。また、すずさんに会いたいです。

anngleさんのコラム 第39回『タイから見る日本のあれこれ』

最新記事が公開になりました。

 

毎年2回くらいは帰省しているのですが、今回はどういうわけかタイとの違い(多くは不便)が目につくことがおおかったのでまとめてみました。

 

この他にも

  • Free WiFiがない
  • 英語以外の記載がある看板が東京近郊にも増えた(福岡あたりには20年以上前から韓国語・中国語の表記がある)
  • 新幹線の自由席(1両目)の大半が外国人観光客
  • 新幹線の座席が向かい合わせにできる案内がどこにもない
  • エスカレーターの設置されていない駅がいまだに多い

なーんてことに目がいきました。

ドメスティックじゃぱん、ちょっとだけ視点を変えると見えてくるものがあると思うんですけどね。私はすっかりバンコクの便利生活に慣れてしまったようです。

 

anngle.o

映画 『ヒメアノ~ル』

軽い気持ちで見るんじゃなかった。

 

見たことを後悔するわけではないけれど、見ないほうがよかったと想わざるをえない。とにかく記憶に突き刺さったトゲをグリグリするような、心をゴリゴリ削るような映画だった。そして確実にずっと記憶に残る一本だ。

 


ヒメアノ~ル PV

 

もともとはV6の森田剛くんが出てるというので興味を持った映画だ。共演者は今をときめくムロツヨシ濱田岳だし、原作は古谷実だし、これはもう軽いアイドル映画的な?かわいい感じな?それなりに面白くてそれなりに泣けちゃう類のやつでしょ?とどこかで思っていた気がする。ところがそれは裏切られる。そんな生易しい映画ではなかった。

 

 

連続殺人犯となる森田くん(この名前がまたつらい)は異常なのか正常なのか。むしろ主人公岡田くんの先輩・安藤さんのほうがよほど社会に溶け込めていない「おかしな人」に見える。二人の部屋の様子を比べても、こざっぱりしている森田くんの部屋に対し、安藤さんのほうはチェーンソーがおいてあったりごちゃごちゃしていて汚部屋の部類だ。しかし後輩である岡田くんを守り、友と呼び、仕事もきちんとしている様子は社会との接点を感じる。ベッドの上で岡田くんに話しかける安藤さんは、岡田くんという社会とのつながりにすがりついている様子すら伺える。一方、森田くんにとって岡田くんは同級生以上でもそれ以下でもない。仕事もしておらず、ゆすりたかりで暮らしている。それはつながりというよりは、一方的に結んだ関係だ。なによりゆかちゃんに対してふたりが持った恋心の現れ方には大きな差があった。どちらもゆかちゃんを見ていたくて付け回していたけれど、岡田くんと付き合っていると知ってからの二人には大きな差がある。ゆかちゃんも、安藤さんのことはストーカーとしては認識していない。

 

私はずっと森田くんが心配だった。返り血を浴びて、ドロドロに汗をかいた森田くん。一軒家で殺人を犯した後、サイズがちょっとあってないパジャマに着替える前にお風呂に入ったのかどうか。服は洗ったのかどうか。どんどん暗い色が増えていく彼のワードローブはどうやってメンテされているのか。体の小さい森田くんには持て余し気味の服。幻聴に悩み、アイマスクをしてイヤホンをしていても眠りが浅そうな森田くん。小さい身体で、自分の居場所を探す森田くん。カツアゲにあったとき、返り討ちにできなかった小さい森田くん。自身ではそんなことは微塵も意識してなさそうだけれど。

 

麦茶をつくってくれたお母さんは、今はどうしているのだろうか。広い庭と縁側をもつ、裕福そうな森田くんのご両親はどうしているのか。同居していた家族がいただろうけれど、その人達はどうしているのか。居場所は、殺人犯の家族にもあるのだろうか。

 

ヒメアノールというのは「ヒメトカゲという体長10cmほどの小型爬虫類で、つまり強者の餌となる弱者を意味」するらしい。誰が強者で誰が弱者かは映画を見るとわかるが、シチュエーションでも、強弱の軸を何にするかでも異なる。金か、暴力か、愛情か、友情か。

 

この映画には底辺の俺達というセリフがあるけれど底辺って何だろうか。鈴木大介さんの著作によれば、貧困層であっても「仲間」がいれば疎外感も少なく、社会との隔絶が起こらないために自らを貧しく厳しい境遇と認識しにくいという。福祉が負うべき貧困層と社会との接点をコミュニティで補完することは現在の社会において是であるという話は、この映画を見る上で参考になると思う。

 

 

tamako99.hatenablog.com

 

 

そんなわけで全く持ってお手軽お気楽なアイドル映画なんかではないし、本作での森田剛の演技はとんでもないので(ここをどう強調していいかわからない!でもすごいから!)、「森田剛ってチャラチャラしてるよね」と思う人ほど見て、裏切られてほしいと思います。私がV6ファンというのを差し引いても、この作品の森田剛はオススメ。

 

あと、これでムロツヨシ沼に落ちました…。まさかのこれで…。

  

ヒメアノ~ル 通常版 [Blu-ray]

ヒメアノ~ル 通常版 [Blu-ray]

 

 

吉村昭 『羆嵐』

吉村昭の本を読むのはこれで2冊めです。

Kindleストアでおすすめされたので買いました。

 

これはかの有名な三毛別羆事件についてです。Wikipediaにすごく詳しく書かれているのでそれで何が起きたか知ることはできます。ただ、文学として昇華してるこの作品はすごく(表現が適切じゃないかもしれないけど)面白かったです。

 

羆嵐(新潮文庫)

羆嵐(新潮文庫)

 

 

貧しくも根をはって新たな土地で生きようという開拓民の決意と、それをあざ笑うかのような自然の荒々しさ、それを象徴する存在としての羆の激しさ、ものすごく深くてものすごく怖い、自らの手が及ばない世界について見せつけられた気がします。

 

まあ、最後は文明の利器でドスンなんですが、それでも使う人の中にある「自然」との対峙や目を背けられない「本能」みたいなものが最後にも待っていて、あまり救いはなかったように思います。

 

前回『破船』を読んだときも思いましたが、吉村昭は貧しい暮らしを描写するのがすごく生々しいですね。お尻がヒュッと寒いような、そんな寒々しさや開拓民の孤立さを感じます。

 

tamako99.hatenablog.com

 こっちは貧乏ゆえの無学無知がつらい。

 

 

近々、テレ東で『破獄』が放送されるようですし、次はあれを読んでみようかな。

 

anngleさんのコラム 第38回 『今年もソンクラーンがやってくる!』

最新記事、公開されています。

 

最近は日本でも水掛けイベントを真夏にやったりしているので、水掛け祭りを楽しみに渡タイする人もいるかもしれませんね。ここ最近、バンコクは朝晩パラパラと雨が降るようなお天気が続いています。この時期、意外と夕方になると肌寒いこともあるので、水に濡れたら要注意ですよ。

 

anngle.org

anngleさんのコラム 第37回 『タイで日本語を学ぶひとたち』

最新記事公開になっています。

 

anngle.org

 

昨日も同僚から「お客さんや上司とのコミュニケーションをとるためにも会話のレッスンをしたいんだけど、誰か紹介して」と依頼されました。彼女は前職で日本語のレッスンを受けていたそうで簡単な会話ならできるのですが、年度が改まったらもっと会話のレッスンをしたい、と常々話していたのです。

 

会社で日本語のレッスンを開催しているところや、研修として日本に長期間送ることもありますし、趣味で独学してる人もいるし、本当に裾野が広いと日々感じています。日本のことを好きで、日本語を少しでも学びたい、と思ってくれる人がいるっていうのはありがたいですね。

 

なので、タイに来たら公共の場での会話にはお気をつけください…。

 

anngle.org