吉村昭 『羆嵐』
吉村昭の本を読むのはこれで2冊めです。
Kindleストアでおすすめされたので買いました。
これはかの有名な三毛別羆事件についてです。Wikipediaにすごく詳しく書かれているのでそれで何が起きたか知ることはできます。ただ、文学として昇華してるこの作品はすごく(表現が適切じゃないかもしれないけど)面白かったです。
貧しくも根をはって新たな土地で生きようという開拓民の決意と、それをあざ笑うかのような自然の荒々しさ、それを象徴する存在としての羆の激しさ、ものすごく深くてものすごく怖い、自らの手が及ばない世界について見せつけられた気がします。
まあ、最後は文明の利器でドスンなんですが、それでも使う人の中にある「自然」との対峙や目を背けられない「本能」みたいなものが最後にも待っていて、あまり救いはなかったように思います。
前回『破船』を読んだときも思いましたが、吉村昭は貧しい暮らしを描写するのがすごく生々しいですね。お尻がヒュッと寒いような、そんな寒々しさや開拓民の孤立さを感じます。
こっちは貧乏ゆえの無学無知がつらい。
近々、テレ東で『破獄』が放送されるようですし、次はあれを読んでみようかな。