また、明日。

マイペースにやってます。

映画 『紙の月』

年末年始、時間があったので映画を見ました。

私たち世代のスーパーアイドル、宮沢りえ主演映画です。

宮沢りえと同じ時代に生きてよかった!と思うほどに好きな女優さんであります。

つか、この年代で宮沢りえを嫌いな人っているんだろうか。

紙の月

紙の月

 

 

さて、この映画。もう、とにかく、ギスギスしててつらい。

 

まず第一に、宮沢りえのあぶらっけのない白い肌と細い腕。襟元までぴっちりと詰めた制服。もう、それだけで妙な威圧感とギスギスが伝わってきて苦しくなりました。

 

そして主人公の夫婦関係や、職場での人間関係がとにかく冷たい。そんな周囲の人たちはひとつふたつ、言えないようなことを隠している。そして銀行という職場が要求する「きちんと」もギスギスを産む装置となっている。お客さんたちは高齢のお金持ちで、裕福だけれど大なり小なり家庭の事情ってやつを抱えてる。銀行の営業とはいえ、家事の手伝いみたいなこともしなくてはいけなかったりして、ここにも歪みがある。(このあたり、ドラマ『ナオミとカナコ』も同じでしたね)

 

そんな環境でひとりぼっちで暮らしている主人公を、なぜあんな若い男の子が追いかけたのか。当初はお金ではなかったはず。そこまで美しいとは思えない(いや、宮沢りえは美しいですが)中年に差し掛かろうという女性をなぜ?

 

でも、主人公にしてみたら「選ばれた」んだよね。目の前がぱあっとひらけるような経験だったに違いない。能動的に選ぶのではなく、選ばれることによって得た開放感はある種の「承認欲求」を満たしてくれる。それがなくなったらまた「つまらない世界」に戻っていってしまうから、高揚感を維持するためにお金を注ぎ始める。お金で若い恋人を縛り、お金に縛られていく主人公。そしてその結果、段々と不自由になっていく主人公。そのお金を工面するために数々の小細工をし、プリンターやプリントゴッコなどのモノにあふれていく主人公。どんどん自由から遠ざかっているのに、高揚感や開放感が自由を錯覚させてくれる。

 

いやー、ギスギスつらかった。ぞっとした。

承認欲求に飢えてるモンスターだな、と思った。

 

あと、友達いなさそうなんですよね、この主人公。ぶっちゃけ、ほんっっっとつまんない女だなと思う。もっと趣味や生活の充実を求めて、自分の機嫌を自分でとれるような充足した人間であったらよかったのにね。人の意見・言葉をさぞ自分のもののように語るし、中身がないんだろうなぁ。(このあたりは原作読むと掘り下げられているのかしら?)

 

そのほかに思ったことを。

  • 小林聡美、同じ制服を着ていても宮沢りえと印象が違うのは立場の違いがきっちり表れてましたね。前髪の長さが特によかった(細かい話しだけど)。
  • その小林聡美演じる隅さん、話し方といい、上司に対峙するときの姿勢といい、きちんとした彼女が最後に犯行をみつけるというのは規定路線だし、会議室での会話も「そうだよなぁ」なのだけど、彼女にとっての幸せとはなんなのか、考えてしまった。安定も大事なので、ああいう人は絶対必要なんだけども。
  • 池松壮亮って中村繁之に似てません?アラフォーは好きかもしれない、この手の顔。バブル世代になると、筒井道隆みたいなほうがいいんだろうな。
  • 大島優子いいですね。叩かれることも多いようですが、私結構この人の演技すきだわ。
  • 次長、うるせぇ。
  • 主人公の旦那さんとのすれ違いっぷりを表す腕時計のエピソード、(気持ち悪くて)すごくよかった。子ども云々言い出したところよりよかった。基本的に奥さんに興味ないんだよね、この旦那さん。信じてるとかじゃなくて興味がない。でもこういう男は現実世界には多そう。
  • ラスト、カオサンだよね。警察署のそばですよ、そこw

映画 『築地ワンダーランド』

一度だけ、築地に足を運んだことがあります。年末にお正月用食材の買い出しに。その時のことはもうあまり覚えていないけれど、とにかく活気とモノがすごくて圧倒された、ということだけは記憶にあります。それ以外には、祖母がエビフライをつくるときには築地まで買い出しに行っていたという母の思い出話や、父の仕事の関係で、毎年築地のお魚屋さんからマグロや数の子、いくらが送られてくる、ということが「築地」という言葉から思い出されるものです。

 

tsukiji-wonderland.jp

 

今では世界中のレストランや料理人に食材を提供し、世界中から観光客が訪れる築地市場。築地はあまりにも当然のようにそこにあったため、これまで客観的にその存在意義を見つめることなく過ごしてきたような気がします。

 

この映画では築地という大きな市場の成り立ちや、そこで働く人たちの姿がみられるわけですが、そのかっこいいこと!!!魚と、食と、職人と消費者に向き合い、プライドをもって働くその姿は「かっこいい」の一言しかありません。それぞれのプロが、それぞれの気概をもって、それぞれの信念に基づく仕事をする。なんてかっこいいことか。

 

市場では氷を大量に使い、鮮度を保つために気温が低いからでしょう、みなさんまるで真冬かのような恰好。買い付けにいく職人さんたちも同様。魚の入った箱を上げ下げしたり、非常に過酷な職場だと思います。そんな場所で働く無骨なおじさまたちの語り口は非常にきっぱりとしています。これが「プロ」か、と。先代から受け継いだ仕事をそのまま惰性にのせてしまうのではなく、自分たちの立ち位置と本分を見極め、「次」につないでいくためにとにかく必死で仕事をしている。その「次」が自分の店や仕事の後継者というだけでなく、給食を通じて次世代にまで食文化と食の大切さを教えることまで含んでいる、という事実に私は涙が出ました。ほんとに。

 

タイの食文化は「外食」が中心で、必ずしも家庭で食事をつくって食すことがベストとはされていません。昨今の食育ロハスライフは素敵だと思うものの、私のライフスタイルとはあわないなーとおろそかにしていました。食事は、次世代を育てつなぐためのもの。一番の体験学習なんですよね。白身の魚の味がわかるのは日本人が一番だ、といいますけども、そういう舌は「育て」なくてはいけない。もう少しおじさんたちの仕事に応える消費者にならないといけない、次世代を育てている立ち場としてももっと能動的に考えなくてはいけない、と思いました。

 

そんな風に真摯に働く人たちをさしおいて、豊洲への移転問題が大きく揺れています。東京都、もう少しまじめにやろうぜ…。

 

それにしても河豚、鱧、鮎、鯛、平目…どのお魚もおいしそう!!!私、こんなに魚好きだったんだ、と自分でも驚くほどでした。「築地で季節が感じられる」という言葉、本当にそうだと思います。テロップなくてもお魚みるだけで季節が意外とわかるもの。私、こんなに魚好きだったんだな。もともとそんなに魚好きではないはずなんだけど。「生産者の顔が見える」ということは、こういうことも含むんでしょうね、きっと。

 

Tumblrアカウントもあるよ。穴子屋のおにいさんが映ってないのが残念…。

tsukijiwonderland.tumblr.com

 

 

映画 『64 - ロクヨン』

見ました!横山秀夫の原作と超豪華キャスト!面白くないわけがない!!

 

64-movie.jp

 

一気に前後編を見ましたが、すごく見ごたえありました。昨今ありがちな「テレビでもよかったんじゃ」という気持ちにはならず、俳優さんの演技ひとつひとつをじっくり見るのも楽しく、また次から次へと豪華なキャストの登場でまったく飽きることなし。ストーリーが良くて(横山秀夫だからね!)さまざまな要素がつながりあっている展開も充実していましたし、心理描写に余白があるのがよかった。全部を見せない、説明しすぎない、これは演出するほうも気を使ったんじゃないでしょうか。ベテラン俳優の方々がその分しっかり演技で見せてくれたし、若手の皆さんも気合いが入ったんじゃないかと勝手に想像してます。(その想像だけでも楽しい)

 

ちょっと広告コピーは盛りすぎでは…と思わなくもないですけど、でもとにかくよかった。久しぶりに骨太な邦画を見ました。

 

では、以下は俳優さんごとにコメントを(ただの個人的趣味です)

  • 佐藤浩市は男くささがすごいですね。ちょっと卑屈な顔をするあたりとか、ぞっとするような「中年男」っぷり。セクシーかつかっこいい年上男性というよりは見事に「中年男」でした。そして永瀬正敏ふんする翔子ちゃんのお父さんの泣き声に目をそらすあの演技。人はああいう顔する。うん、する。
  • 綾野剛がよかった…!考えに考え、じっと堪え、そして後半に爆発するあの演技。もう少ししかめっつら減らしても良かったかな、と思うけど(笑)若手俳優さんが多数出ている中、個人的には「この人の演技は信用していいんだな」と思いました(えらそうだな、私)
  • 榮倉奈々好きなんですが、制服ものだからなのか『図書館戦争』とかぶる…。そういう意味では「お飾りの女性警官」に甘んじてる姿にイラッ!でもそれが警察という組織なんだろうなぁ。男社会だものなぁ…。
  • 赤井英和が普通にしゃべって演技してるだけで涙が。
  • 筒井道隆といえば90年代のハートスロブ。当時、OLのお姉さん方が「子犬のような目が!かわいい!」とメロメロだったのを思い出しました。調べたら45歳ですって。若いなー。
  • 吉岡秀隆って46歳ですって。ずいぶんと若々しいですね。ちょっと不器用で影のある役がほんとによく似合う…というか、うまい。自らのフィールドでうまく演技してる感じで、見てて安心感が(完全に純の役柄を引きずってみています)
  • 窪田正孝は引き出しがすごいですね。そして昭和な風景になじむところがまたヨシ。個人的には『アルジャーノンに花束を』を見ていて「自分のせいではない理不尽な理由で苦労と貧乏を背負う人物が似合う俳優として、萩原聖人の後を継げるのはこの人しかいない!」と勝手に確信いたしましたので、是非とも昭和を舞台にした作品に、できれば苦労人役で出ていただきたい。40歳くらいになったときにどんな役者さんになってるのか楽しみです。
  • 中村トオルが出てくるとあぶ刑事にみえて仕方ない(たぶんそう思ったのは私だけではないはず)
  • 県警本部刑事部は濃い!濃すぎる!
  • 柄本佑がぶったおれるシーン、デジャヴですかね…。ああいうシーン、どこかで見たことある気がするんですが、実際の事件でありませんでしたっけ?
  • 緒方直人はさすが…!鬼気迫る演技!お父さんを引き合いに出すのはフェアじゃないかもしれませんが、あの親にしてこの子あり、といいたくなりました。やさしい顔立ちだけど、あんなにすごい形相ができるとは(いや、顔芸的なことではなくて演技として)
  • 三浦友和はなにをしてもかっこいい(昭和生まれ、百恵ファンなわたくし)

 

横山秀夫ってハズレがなくて、個人的にものすごく好きな作家さんです。もともとはミステリー好きな父に教えてもらったんですが、『64』も読まないといけないですね。長編ですから、年末にでも挑戦しようかな。

 

 

Kindle Unlimitedにもあります、横山秀夫作品。これは短編集ですが、1編1編の中身が濃くて余韻がすごい。オススメです。 

深追い (ジョイ・ノベルズ)
 

 

名刺代わりに好きな映画10選してみた

「名刺がわりに好きな◎◎10選ってどうよ?」という提案をTwitterでみかけて、じゃあやってみようと思ってやったのがこちらです↓

 

 

 以前も書きましたが、私は10代~20代を自他ともに認めるUKインディーズとミニシアター好きとして暮らしていました。ここに挙げた作品の半数は当時からの「ALL TIME BEST」とも言うべき作品で、後半の3本は結構最近の作品になっています。『ホーリー・モーターズ』にするか『POLA X』にするかはかなり悩んだところなんだけど、「希望」のある前者を選びました。ずいぶんと人生に「希望」を持つことにしたんだな、自分・・・とちょっと思ってみたり思わなかったり。

 

それにしても、このタグをたどって他の方々が挙げているものを見てみると、実生活ではなかなか出会うことのない、同じ作品を見て「好き」だと言っている人がいて(しかも複数いた!)驚いた次第です。

 

特に『春にして君を想う』はシネマライズ渋谷での上映で、上映期間もそんなに長くなかったものです。公開当時は日本国内で初めて上映された「アイスランド映画」であり、『ベルリン天使の詩』のブルーノ・ガンツ演じる天使が出てくることが宣伝でも盛んに触れられていたのを覚えています。ひたすらに美しいアイスランドの風景と、人生を終えていくさみしさをふんわり包み込んだ何とも言えない味わいの、情景と人物描写の非常に美しい映画なのです。この映画を誰かが見て、同じように大事に心にあたためていると知ることができたのは、とてもうれしいことでした。SNSすげー。

 

本棚の話にも通じるのですが、「読んだもの/見たものは知となり肉となる」のは音楽や美術、映画、読書を趣味とした場合に得られるいい例だと思います。特に10代~20代の想像力豊かかつ吸収力の高い時期に多くの価値観に触れることが大切なのは言うまでもありません。たまたま私は恵まれた環境で求めれば求めるだけ与えてもらえましたが、同じ環境にいても興味を持たなかった弟が後年「姉貴はいいよな。俺ももっとしてもらえばよかった」といったときにうーん、と唸ってしまいました。

 

そんな私が抱えている弟への愛憎含めた矛盾と葛藤に満ちた感情を丁寧に描いたのが『オリヴィエ・オリヴィエ』であり、個人的にアニエスカ・ホランド監督の最高傑作ではないかと思ってます。兄弟姉妹のいる人は是非。

 

ところで、もうひとつTOP10リストをあげていて、それはもっとアレな感じです笑